コラム

日本郵政4003億円の損失計上へ
豪国買収企業の業績悪化が原因

2017年4月28日

2017年4月25日、日本郵政(東証一部:6178)は、一昨年買収したオーストラリアの物流企業の業績が悪化していることから、2016年3月期決算でおよそ4,000億円の損失を計上すると発表しました。
これによりグループ最終赤字となる見通しで、2007年の民営化後初の赤字転落となります。

日本郵政は、国際物流機能の強化を目的として、2015年5月オーストラリア物流大手トール・ホールディングス(以下、トール社)を約6,200億円で買収し、のれん5,321億円を計上していました。今回の損失はトール社の業績悪化で目減りした、同社株式の資産価値を反映させるための処理です。

当時から、巨額ののれん償却の負担増の懸念の声が上がっていましたが、買収後2年を待たずして、のれんをほぼ全額吹き飛ばす規模の減損計上となりました。
これにより、日本郵政はこれまで3,200億円としてきた昨年度の最終利益の予想を下方修正し、400億円の最終赤字になる見通しで、2007年の民営化後初の赤字転落となります。

減損計上の背景:トール社業績の悪化

トール社の事業内容は、大きく2つに分かれ、
①豪国国内物流事業、
②国際フォワーディング事業から構成されます。
地域的には、豪州内に加え、アジアパシフィック地域を主戦場としている企業です。

トール社の業績悪化の根本原因は、鉄鉱石などの資源価格の下落により、豪州国内物流事業が低迷したことにあります。トール社自身も景気拡大期にM&Aを繰り返すことで成長を遂げた企業であり、経営統合の効率化の課題を恒常的に抱えていたと言われています。
資源価格の下落により足下の国内景気が悪化により、固定費の高さに起因するコスト競争力の低さが露呈したようです。

企業価値評価算定の難しさ

日本郵政の長門正貢社長は、巨額減損の結果に対して、「リスクの見通しが甘かったという批判もあるが、否定するのは難しい。負の遺産を根本から一掃して、成長路線に戻れるように精進したい」と述べ、トール社の買収を決めた当時の経営判断について、見通しが甘かったという認識を示しました。
約6,200億円の買収金額の内およそ8割がのれんであった事実だけを見ても、トール社事業の成長性・将来性を高く評価していたことがわかります。事業運営にはリスクはつきものとは言えど、出資後わずか1年余りでの8割減損の結果は受け入れがたいものでしょう。あとの祭りですが、中長期的な成長性・将来性に高い評価を付けるだけでは片手落ちであり、短期的な事業基盤の安定性や収益力の評価もしっかりと行う必要があったという教訓を読み取ることができそうな事例です。
尚、海外事業の買収をめぐっては、経営再建中の東芝が買収した原子力事業会社ウェスチングハウスの経営破綻で1兆円を超える巨額損失を計上する可能性を公表しています。

買収にあたって企業の価値をどう判断するかという問題は、正解のない永遠の課題ですが、今後海外市場に活路を見出さねばならない日本企業としては、こうした実例から教訓を学び取っていきたいものです。

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