M&Aでの売買価格の決め方

企業価値評価とは

会社や事業の価値を算出する方法には様々なアプローチがあり、これは明らかな間違いだ、という考え方はありません。
今現在の資産価値で会社を評価するのか、同業の会社が市場でどの程度評価されているのかを参考にするのか、会社の将来性で評価するのかなど、どれも筋が通っており、その全てに検討するべき価値があると言えるでしょう。
会社や事業ほど、価値の算定が困難で定まらないものはありません。
企業業績を正確に見通すことは不可能と言ってもよく、社会情勢も予測困難で土地一つとっても現在と3年後では資産価値が変わっていることは明らかだからです。
そのように様々な要素を反映し、定まらない企業の価値を見定めようとする試みを、企業価値評価と言います。

清算価値という考え方

今現在会社を清算した場合、その会社や事業にはどの程度の価値があるのか、という観点から企業の価値を算定する考え方を清算価値(もしくは解散価値)と言います。
会社の歴史や信用、職人的な技能といった無形の実質的価値はもちろん、黒字が出ている会社であっても事業価値を一切考慮せず、ただ保有している現金や預金、有価証券や土地・建物といった資産のみを会社の価値とします。
企業価値評価の中では一般に低い評価になる可能性が高く、通常のM&Aを考える際にも下限の目安になることが多い考え方と言えるでしょう。

また、清算価値の考え方も大きく2つに分けることができます。
一つは資産から負債を引いた純資産を清算価値とする考え方で、もう一つは資産内容を時価もしくは実質的価値で換算しディスカウントするものです。
実際に在庫資産はその100%を換金できる可能性は極めて低く、その全てを額面通りの資産価値があるものと評価することはできません。
M&Aでデューデリジェンスを行う際も、バランスシート上に記載されている資産は個別に適切と考えられる額に割引かれる事が多いために、より現実的な考え方と言えます。
株式市場でも、一株あたりの純資産額はBPSと呼ばれますが、株価がこのBPSを下回ることが少なくありません。
つまり、その会社の時価総額(その会社を買収するための総額)がその会社の保有する純資産よりも安いという、ある意味で異常とも思える状態が発生するわけですが、リーマンショック後の株安が続いていた時期に東証一部企業の8割近くがこの状態に陥っていたこともあります。

いくら株安とは言え時価総額が純資産を下回るのが当り前という状況は、投資家は純資産の内容を信用していないことの裏返しとも言え、清算価値は簿価純資産ではなく、より厳しく資産の内容を精査した換金価値にディスカウントして算出される傾向が強くなっていると言えるでしょう。

市場価値という考え方

算定対象の会社や事業が今現在、実際にどの程度の価額で売買されているのか、という観点から企業の価値を算出する考え方を企業の市場価値と言います。
上場会社であれば、日々不特定多数の投資家により様々な条件を織り込んだ時価総額が算出されているため市場価値の算出は容易で、条件により一定期間の株価を集計し、参考にして市場価値が算出されます。非上場会社であっても、企業規模が比較的大きな会社の場合は、上場している類似業種のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった代表的な株価指標を引用し、それに準じる市場価値があることを前提に算定されることが一般的と言えるでしょう。

では、上場していない場合で比較的規模の小さな会社の場合、どのような情報を市場価値の根拠として引用するのでしょうか。
例えばある程度大きな土地の売買をしたことがある方ならご存知かもしれませんが、少しまとまった土地の売買をする際には不動産鑑定士に依頼し、直近で同様の条件の土地がどの程度の単価で売買されたかを参考にして評価額を算定してもらうことがあります。
この際、算定対象の周辺の土地であること、地盤の状況、交通の利便性といった点に類似性が見られる取引を幾つかサンプリングし、その平均値を元に坪単価を推定し算定対象の土地の広さを掛けて算出することになります。
非上場会社のM&Aの際も同様に、このように直近の類似事業者の売買実績を参考にして市場価値の推測を行うことがよく見られる考え方です。
この際、業界によっては売買事例が豊富でやや変則的なルールを持っていることもありますが、例えば一度顧客を獲得すれば安定的な収益が見込めるプロパンガス事業者の場合、加入世帯数×契約単価といった指標が企業の市場価値を算出する上で重要視されます。
Webコンテンツ配信事業者の場合、そのサービスの利用者数や1ヶ月間のPV(ページビュー:閲覧数)に一定の単価を掛けて市場価値とするケースも存在します。
このように、非上場企業の市場価値の算定は様々ですが、多くの場合直近になされた類似事業者の取引実績と、上場企業の株価などの市場評価を併用して決定することが多いといえるでしょう。

継続価値という考え方

清算価値という考え方が、これまでの企業活動の結果形成された資産と負債を元にして企業価値を算定する手法であるのに対し、継続価値は、対象となる会社や事業がこれからどれだけの価値を生み出す可能性があるか、という点に着目して企業価値を算出する考え方です。
具体的には、将来に渡って発生するであろうFCF(フリーキャッシュフロー)や、配当、収益を元にして企業価値を算定する考え方で、FCFと収益を参考に将来価値を算定する方法が最もよく用いられる考え方と言えるでしょう。
ざっくりと説明するとその会社や事業が将来に渡り生み出すことが予測される収益やフリーキャッシュを元にして現在の企業価値を推定しようとする試みです。
これをより肌感覚に近い事例に置き換えると、1億円の現金を持っている場合、年利5%の1年複利で計算される預金に預け入れると5年後に生み出される自由に使える新たな価値(利息)は2760万円余りです。今、M&Aで手に入れようとしている会社が5年後にフリーキャッシュとしてこれ以上の収益を生むと見込まれるのであれば、この預金商品との比較で1億円以上の価値がある物件と言えます。
一方でそれ以下の収益もしくはフリーキャッシュしか生み出さないのであれば、1億円の価値はないと言えるでしょう。
このように、継続価値という考え方は企業が将来に渡って生み出す価値、すなわち事業価値そのものにフォーカスした企業価値の算定方式と言えます。

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