M&Aでの売買価格の決め方

類似業種比準価額方式

会社を取得価額300万円の車に例えた場合、純資産価額方式では定められた減価償却の方式に従い資産価値を償却し、例えば現在価値を150万円と考え譲渡価額の基本とするのが基本的な評価方法です。
一方、類似業種比準方式では、その車の年式や色、型式や事故歴など類似の車が現在中古車市場ではいくらで売買されているのかを調べ、その実勢価値を参考にし、例えば210万円などの譲渡価額を決定します。この場合、既に生産終了になっているレアな車であれば取得価額を上回る500万円という評価額がつくことも、当然考えられます。
資産価値にフォーカスをするのではなく実勢価格にフォーカスをするのがこの方式の特徴と言えますが、一見合理的なこの考え方はM&Aに臨む際、実際にどのように機能させるのでしょうか。

純資産価額方式とは

M&Aで企業価値評価を行う際、対象となる会社や事業が市場ではどの程度の価額で評価されているのかを参考に評価し、そこからその会社の事情を加算もしくは減算する方式を類似業種(会社)比準方式と呼びます。スモールM&Aから上場企業のM&Aの場合にも必ずと言っていいほど用いられ、この考え方が一切考慮されないM&Aはレアケースと言えるでしょう。考慮されないパターンとして多いのは個人事業の場合です。M&A Bankでは中小企業の案件も多く扱っている事から、レアパターンに出会う事があります。
よりたくさんのサンプルが得られやすい中堅以上の会社規模であれば類似会社を参考にし、類似会社を多く集めるのが困難なスモールM&Aでは業種ごとの市場評価を参考にすることが一般的です。 この際、基本になる市場価値は株式市場での実際の取引価額と、M&A市場での実際の売買価額ということになりますが、多くの場合はその併用が基本になります。
東京証券取引所には2017年1月末現在で3500社余りの会社が上場しており、建設、機械、小売、運輸、サービスなどといった様々な業種に区分され、日々不特定多数の投資家によってその株式の取引が為されています。
そのため、なんらかの意図や特定少数の集団の思惑で企業価値の評価が決まりにくく、客観的な企業価値の評価が日々更新され、信用できる企業評価の入手が容易なことから、もっとも参考にされる指標といえるでしょう。

これらの情報は、個別の企業だけではなく業種別でも、PER(株価収益率)やBPS(一株当たり純資産)のような主要株式指標の形で平均値が発表されていますが、M&Aの際にもっとも参考にされることが多いのはこのうちPERで、これは株価が一株あたりの予想純利益の何倍になっているかを表しています。わかりやすくいうと、その会社の値段はその会社の純利益の何年分か、ということです。
今ほどM&Aという考え方が根付いていなかった時代にも会社や事業の譲渡と言う行為は行われていましたが、その際には
「じゃあ利益の5年分で」
「それは高い、出せても3年分までだ」
といったざっくりした値交渉が行われていた描写が古い経済小説には出てきますが、PERを参考に会社や事業の譲渡価額を決定するのはこの延長にある考え方と言えるでしょう。

スモールM&Aの際にも、あまり難しく考えずに「利益の何年分か」を元に、類似の会社や業種での評価を引用して交渉をすると考えると理解しやすいかもしれません。
中小企業案件の多いM&A Bankでは同様の考え方をすることがありますし、買い手側も細かい部分まで固執する事は少ないと言えます。

類似業種比準方式のメリットとデメリット

スモールM&Aから大企業同士の企業価値評価の際まで幅広く用いられる類似業種(会社)比準方式ですが、実際の取引価額を参考にして譲渡価額を決定するため売り手・買い手にとって納得感が高く、当事者が持つ交渉力の優劣を排除しやすいことが大きなメリットといえます。
M&Aではどうしても、売り手もしくは買い手側のどちらかがM&Aの知識と経験に勝っていることが多く、特に事業承継などのスモールM&Aでは、売り手側の会社経営者は最初で最後の経験ということもあり、交渉力の優劣が譲渡価額に影響すると極めて厳しいことになりますので、本方式を少しでも知っておくと良いでしょう。
適正価額に客観性があることに加え、理解しやすい方式であるがゆえに、難解な交渉を持ちかけられても対応が容易であることが本方式のメリットと言えます。

一方でデメリットは、本方式の場合スモールM&Aでは類似会社や類似業種の企業価値評価を探すことが容易ではなく、十分なサンプルがない場合は適切な比較ができないことにあります。
その場合は上場企業の中で比較的類似性のある会社の評価を引用することがありますが、限界があるといえるでしょう。
証券市場の類似業種平均値を用いて試算することも可能ですが、一般に株式は流動性そのもので価値が大きく変わり、上場企業の株式は現金に近い流動性が期待できる反面、未上場企業の株式は換金することがほぼ不可能なので同等の評価を期待することができません。その際はやはり、どの会社を類似会社に用いることが適切か、上場企業の類似業種を用いてもどの程度ディスカウントするか、という交渉が避けられないため、必ずしも客観性が確保された企業価値評価にならない傾向があるといえるでしょう。
十分なサンプルがある場合は有効な反面、逆の場合は非常に根拠の乏しい方式にもなることが、本方式のデメリットと言えます。

類似業種比準方式で価額が決まるケース

類似業種批准方式は様々なスケール感のM&Aで企業価値評価に用いられるため、本方式で価額が決まるケースはとても多く、サンプルになる類似業種や類似会社が多い時ほど、本方式での企業価値評価に重きがおかれた価額決定のプロセスになるといえるでしょう。
例外的なケースとしては、成長の速度が極めて早く、類似会社や類似業種の現在の状態を比較対象にして会社や事業の価値を決めるのが適切ではない場合で、ITバブルと呼ばれていた2000年代前半のIT企業では、後述するDCF方式に重きがおかれた評価方式が用いられました。
そのような意味において、事業の状態が安定的で過去の業績が大きく変動する可能性が低い場合には、類似会社や類似業種のどちらを用いても精度の高い企業価値評価になるといえます。

スモールM&Aでは、純資産価額方式と類似業種比準方式の両方で算定した上でその両方の要素を考慮して決定されることが一般的ですが、会社の規模が小さいほど純資産価額方式に、ある程度の規模になってくると類似業種比準方式の評価の割合が大きくなる傾向があるといえるでしょう。
なお、国税庁が定める財産評価方式においては、「取引相場のない株式の評価の原則」として大会社では類似業種比準価額を、中会社の場合は類似会社批准価額と純資産価額を併用して、小会社の場合は純資産価額を用いることとされています。
このような国策はM&Aの実際の現場にも馴染みのある考え方であり、自社がM&Aを行う際にも、どの方式を用いて企業価値評価を行うかを交渉する際の理論的な根拠にすると良いでしょう。

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