M&Aでの売買価格の決め方

DCF法

DCF法はディスカウントキャッシュフロー法の略で、将来得られるキャッシュフローを現在価値にディスカウントして企業価値を評価する方式です。あくまでもフリーキャッシュフローを元にし、会社の売上や利益を企業の価値評価に用いていないことが大きな特徴と言えます。
これだけでは何のことを言っているのかわからないという人がほとんどあろうと思いますが、上場企業や、未上場会社でも大企業の場合の企業価値評価に用いられることが多い方式なので、なかなか馴染みのある人は少ない考え方であるといえるでしょう。
キャッシュをディスカウントするとはどういう意味なのか。そしてそれをどうやって企業価値の評価に用いるのか。
M&Aを検討している場合には必要になる考え方の一つであり、本稿では理論式ではなく考え方を中心にご説明を進めていきます。

DCF法とは

キャッシュをディスカウントする、という考え方を肌感覚でわかりやすいようにご説明すると、例えば社運をかけたプロジェクトチームに会社から特別ボーナス100万円の支給が受けられるという嬉しい知らせを受けた場合。プロジェクトが始まる前の今とプロジェクトが一段落した1年後かを選んで良いと言われたら、通常どちらを選ぶでしょうか。
これは、定量的な価値だけで言うと今受け取る方が圧倒的に合理的といえる判断です。
単にリスクの問題ではなく、今100万円を受け取り、一切手を付けずに預金3%で預けると1年後には103万円に増えているからです。

一方1年後に100万円を受け取っても100万円は100万円のままです。
逆に言うと1年後の103万円は現在価値に直すと100万円であると言えるでしょう。1年後に100万円を受け取ることは、現在の価値に直すと100万円を1.03で割ったおよそ97万円しか受け取っていないことになる、とも言えます。
これを、1年後の100万円を割引率3%で現在価値にディスカウントする、と言います。
DCF法ではこのように、M&Aの対象となる会社や事業が所定の期間内にどれくらいのフリーキャッシュフローをあげることが出来るか、という予想を元にして、そのフリーキャッシュフローを現在価値に割引き、その総額を集計することで譲渡価額を決定します。

例えば本方式で、毎年1000万円ずつ5年間、フリーキャッシュフローを生み出すと予想される会社を割引率5%で評価してみます。
1年後の1000万円は現在価値に直すと 1000÷1.05で約952万円。
2年後は1000÷(1.05×1.05)で約907万円。
同様に計算していくと3年後は約864万円、4年後は約823万円、5年後は約784万円となり、5年間で生み出されるフリーキャッシュフローを現在価値に割引した金額の合計は約4330万円になります。
つまり、その他に確実に5年間を5%の利回りで動かせる資金運用があった場合、この会社は4330万円以下であれば安い買い物といえますが、それを上回る場合は高い買い物と考えられます。
これがDCF法による企業価値評価の基本的な考え方です。

DCF法のメリットとデメリット

DCF法の画期的なところは、企業経営においてもっとも大事なもの、すなわちフリーキャッシュフローに着目して企業価値を試算していることにあります。
会社経営において究極的に重要なものは利益ではなくフリーキャッシュといえます。いくら決算が黒字でもキャッシュが枯渇すれば会社は事業を継続できません。
逆にいくら決算が赤字でもキャッシュさえあれば会社は存続をすることが出来ます。
類似会社批准方式などを用いる際に企業価値評価の中心的役割を果たすのはPER(株価収益率)ですが、これは純利益にフォーカスした試算方式です。肌感覚でも、その会社がどれくらいの純利益を上げているか、という数字を企業価値評価に用いるのは無理のない試みであるように思えます。

しかしながら、いくら純利益を上げていても巨額の借金があり元本返済でキャッシュフロー全体が赤字になっている場合。
この会社は対応を誤れば事業停止に追い込まれることもありえます。
純利益だけで評価することは正しいと言えないでしょう。
このように、DCF法のメリットは企業経営の自由度を大きく左右するフリーキャッシュフローの価値に重きをおいて企業価値の評価を行っていることといえるでしょう。

一方でデメリットですが、所定の期間内に生み出すことができるキャッシュフローの予測は極めて困難であり、理論上は合理的な考え方であっても現実的には非現実的な考え方という場合も少なくありません。
特に売上変動の大きな業界や収益基盤の安定しない中小事業者においては1年後に生み出されるであろうフリーキャッシュフローの予測も困難であり、企業価値評価に用いるのは適切とはいえません。
その為本方式では多くの場合、予測の上限値と下限値を設定するなど幾つかのパターンを用意して予測を行いますが、その事自体が予測の精度が高くないことを裏付けているともいえるでしょう。
理論上は受け入れられる考えでも、予想キャッシュフローの根拠が乏しければ説得力のない方式であるといえます。

DCF法で価額が決まるケース

DCF方式がM&Aの際の企業価値評価に用いられるのは上場企業や大企業の場合、もしくは成長率が著しく純資産方式や類似業種比準方式で得られた数字にほとんど意味が無い場合と言えるでしょう。
かつてはM&Aの際の企業価値評価ではなく、IPO(株式の新規上場)の際に株価の計算方式として、他に適切な方式が無かったIT企業の公募・売出価格の試算に用いられたケースが多く見られました。現在でも、大企業などで新規プロジェクトを開始する判断をする場合、投資する資本に対して得られるリターンが割に合うかどうか、という試算を行う際に用いられています。
スモールM&Aでこの計算式を用いた企業価値評価が採用されることはほとんどないと言って差し支えないと思われますが、一方で、
「この会社は今後3年間で1000万円は稼げるはずだから、800万円以下では売れない」
と言い換えれば、急にスモールビジネスの肌感覚で考えられるのではないでしょうか。

類似業種比準方式でも、「純利益の何年分」という考え方に近しいという見方をご説明しましたが、DCF法でも、このような見方で考えてみれば、決してスモールM&Aには不必要な考え方、というわけでもないことがおわかり頂けると思います。
考え方を知る目的以上の複雑な計算式を理解する必要はありませんが、M&Aの際に用いる主要な企業価値評価方式として、基本的な理論は身につけておいたほうが良いといえるでしょう。

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