M&Aのスキーム

合併:吸収合併によるM&A

スモールM&Aではあまり目にすることがない企業の吸収合併。
一般に会社の「買収」や「TOB(株式の公開買付)」の意味が混在した説明や解説を目にする事がありますが、両者はM&Aで得ようとする目的は同じであっても、会社法上は全く異なる行為と定義され、進め方も必要な手順も大きく異なります。
吸収合併では、2つ以上の会社のうち1社を存続する会社に定め、それ以外の会社の資産や負債の全てはもちろん、権利や義務も含めた会社の全てを存続会社に包括的に承継させることになります。この際、合併契約書で被吸収会社の権利や義務の一部について承継しないという趣旨の記載があっても無効とされており、全ての引き継ぎが強く義務化されていることが大きな特徴と言えるでしょう。
この方式は一般に同業を営む会社同士で規模の利益を追求する場合に用いられる事が多く、平成に入り都市銀行や地方銀行が次々に経営を統合した際にも吸収合併方式が多く見られました。
スモールM&Aでも、会社を事業承継する場合で事業規模が比較的小さく、子会社として存続させる定量的メリットが少ない場合に株式譲渡方式ではなく吸収合併方式が用いられることがありますが、組織再編行為のためその手順と必要な手続きはとても煩雑になります。

合併:吸収合併によるM&Aの概要と進め方

吸収合併方式と同様に多く用いられ、同じような効果を狙えるM&Aに株式譲渡方式があります。
両者は、対象会社を完全に支配し一体として経営をしていくという意味では実質的な効果は同じともいえますが、吸収合併方式では文字通り両者が一体になり法人格もひとつになるのに対し、株式譲渡方式によるM&Aでは子会社化などの形で法人格が残ることになります。
法人が一つになるメリットが大きいケース、子会社として存続させるメリットが大きいケースは業界や業種、関連する法律や財務内容で異なり一概には言えませんが、銀行や証券、保険といった金融業界のように規模の大きさが会社の信用に直接結びつき、規模の大きさ自体がメッセージとなる場合には迷わず吸収合併方式が選ばれてきたと言えるでしょう。
他方明確な本業が存在し、本業との相乗効果を狙って周辺事業を買い取る場合には本業と一体化させる意味が薄く、独立した法人として存続させるメリットが大きいため、子会社化に留めることが多いと言えます。

一方、本方式でM&Aを進める場合、経営者同士の合意だけで簡単に話を進めることはできません。
2つ以上の法人が一つになり、それぞれの会社の在り姿に極めて大きな変化をもたらすことから、債権者の保護手続が必要になる他、合併に反対する株主がいれば、会社はその株式を買い取る義務を負うことになります。
買取価格について当事者の合意が得られない場合、最終的に裁判所に判断を委ねることになるなど、金融負債(銀行借入)が存在する場合や利害が一致していない株主がいる会社の場合にはやや大掛かりな準備が必要になってきます。
株式譲渡方式と同じような効果を得られるとは言え、会社を再編する行為を伴うことからその分の作業や意思決定が非常に重くなるM&Aの方式であるとお考え下さい。

売り手側のメリットとデメリット

吸収合併の完了後は通常、旧経営陣と新経営陣が同じ会社で協力して経営を行っていくため、売り手にとってのメリット・デメリットと買い手にとってのメリット・デメリットは多くの部分が一致します。
そのため、スモールM&Aで経営者が引退する際のメリット・デメリットを想定した場合に限定してお話すると、合併で得られる定量的なメリットでは、スムーズに話が進めば株式譲渡方式によるM&Aと大差はありません。
その一方で、経営者引退後の従業員や会社組織に目を向けると、別会社の形で雇用が承継される場合、親会社の社員に比べ明らかに差がある扱いをされることや、場合によっては子会社を廃業するという選択肢が出てくることもあります。
しかし吸収合併で一つの会社に再編される場合、親会社と子会社の従業員という立場の区分はありませんので同じ人事や就業規則の下で働けることから、名実ともに従業員を預ける事ができるでしょう。
経営環境や経営者の考え方の変化によって、別会社であることの融通を効かせ子会社のみに何らかの差別的な処遇が適用されることもありませんので、心残りは軽くなるといえます。

デメリットについては、この方式を買い手側が希望し実施することになった場合、事前準備と根回しに株式譲渡方式とは比べ物にならない作業量と場合によってはリスクが発生することが上げられます。
経営者同士で合意ができても、会社法で定められた手続きで債権者保護手続を進めあるいは株主への周知期間を設ける必要があり、合併に反対する株主がいればその持ち分を買い取るなどの措置も必要になることから、場合によっては合併が中断になることも珍しくありません。
詳細は買い手側の立場と重複するためここでは簡略に留めますが、株式譲渡方式の場合、経営者個人が所有する株式を第三者に譲り渡すいわば個人の行為に対して、会社の合併は会社そのものを別会社に譲渡するため、会社のステークホルダー(利害関係者)全員が当事者になる行為(=組織再編行為)であり、手続きが複雑化すると言えます。

買い手側のメリットとデメリット

本方式で狙う買い手側のメリットは、多くのM&Aがそうであるように事業規模の拡大や新しい地域に進出する際の足掛かりとなる会社を得るために。あるいは大手企業同士の合併の場合、シェア(市場占有率)を上げることで業界内での主導権を握り、様々な方面に影響力を強められることなどが上げられます。
副次的な効果として、会社が合併することで一つの会社になることから間接部門や本社機能を統合することができ、間接費の削減にも繋がることがメリットとしてあげられる例もよく見られるといえるでしょう。

デメリットとしては、2つ以上の会社が合併し一つの会社になるとはいえ、それ以前は別会社で別の経営者による経営理念のもとに運営されていたことから1つの社内に2つの企業文化が混在し容易に実質的な統合が実現できないことが上げられます。
また間接部門や本社機能を統合できるとはいえ実際に人員削減がスムーズに進められるかどうかは未知数で、かつて大手都銀同士の合併の際は役員の数がそのまま足し算に近い状態になり、いわゆる平取(常務や専務といった肩書のない取締役)は、役員会の際に壁際でパイプ椅子に座っていたというエピソードもあります。
より身近なスモールM&Aのメリットとデメリットに限定して想定すると、事業規模の拡大などのメリットは同様ですが、名実ともに一つの法人にすることで財務内容や人事・労務などあらゆる意味で管理の目が行き届きやすいこと。
異なる知識と経験で同じ業界を生き抜いてきた役員や従業員を一つにすることで多様な発想や価値観が生まれ、思わぬ相乗効果を得られることが上げられます。

一方で賃金や休日休暇など、従業員が強く意識する運営ルールが異なる会社を1つにすることで社内ルールに矛盾が発生し、あるいは異なる評価基準を一つにまとめることから、過渡期にはいびつな人事評価を導入せざるを得ないことがあるなど、人の気持ちに相当配慮した組織運営が必要になります。
2つ以上の会社であれば可能な、それぞれの会社で分けるべき売上や利益の切り分けもできなくなりますので、収益力の明確化という意味ではデメリットになるといえるでしょう。
株式譲渡方式に比べ必要になる事務手続きも比べ物にならないほど煩雑になり、手軽なM&Aとは言えないことから機動的にM&Aを実施したい場合には不向きともいえます。

M&A Bankにご質問はありませんか?

さらに詳しく話を聞きたい、知りたいという方!まずは、お気軽にお声かけください。
みなさまのお問い合わせをお待ちしています。

  • カフェ1店舗のような、小額・小規模なM&Aでも相談歓迎
  • 税理士法人が運営しているから、難しい相談も安心
  • メールでいち早く案件情報を配信するからマッチングがスムーズ