M&Aのスキーム

資本・業務提携とM&A

本章ではM&Aの個別の手法ではなく、M&Aの結果として構築される資本・業務提携とその在り方についてご説明をしていきます。
M&Aとは通常、資本の移動を伴う業務提携や事業の合併・統合を行うもので企業の目的そのものではなく、売上・利益の最大化を追求する上での手段と位置づけられるでしょう。
売上・利益の最大化を図るには、商品やサービスの質を向上させ競争力を高め、またコストを削減することが一義的に考えられるべきことですが、資本・業務提携はこれらの目的をより効率的にこなすための仕組みづくりと言えます。
投資ファンドなどのように、M&Aを通じて巨額の利益を追求することを本業とする事業者も存在しますが、基本的にM&Aはこれら仕組みづくりの為の取り組みであり、事業会社にとってM&Aは直接的に利益を生み出すものではありません。
あくまでも本業があり、その本業をどのようにしてより効率的に、より速く、より強く成長させるかを考えるための手段で、事業会社単独で戦うよりも仲間を作り協力して戦った方が生き残れる確率が高まる以上、資本・業務提携は積極的に検討されるべき施策と言えるでしょう。

資本・業務提携を目的としたM&Aの概要と進め方

資本・業務提携にはそれぞれ、吸収合併から100%子会社、関係会社、少数株主、資本関係を伴わない業務提携までその内容には様々な段階と形があります。
逆に言うと、企業は事業を存続させるという目標に対しこれらの段階と形を自由に使いこなし、売上と利益の最大化を図ることができると言えるでしょう。
一般に資本・業務提携といえば吸収合併や100%子会社化などを伴わず、事業会社がそれぞれの独立性を一定程度維持しながら資本を出し、あるいは持ち合い、業務の一部を統合するなどして売上と利益の最大化を図るものですが、資本政策上、意味のある持株比率には以下のようなものがあります。

  • 3% 少数株主の権利が認められる持株比率
  • 33.4% 会社の特別な意思決定(特別決議など)を阻止することが可能になる持株比率
  • 50.1% 会社の通常の意思決定を支配できる持株比率
  • 66.7% 会社の特別な意思決定を単独で行える持株比率

通常、事業会社が独立性を確保しながらお互いの信頼関係を補完し、業務の一部で提携を図る際には33.3%以下の持株比率に抑えることが一般的と言えるでしょう。
また、33.3%を支配していなくても他に利害を共通する株主と議案ごとに協力するなど実質的に影響力を行使することは十分に想定されるため、持株比率が10%を越えてくると事実上その意志を無視できない存在になってきます。そのため中小企業などのスモールM&Aでは外部の持株比率は全て合わせても20%程度より下に抑えておくことが、経営の自由度を最大限確保する観点では守るべきラインになります。
また将来のIPO(株式の新規上場)を目指す場合、特に外部株主の持株比率は重要になります。
上場までに出資をしてくれた株主は大事な存在ですが、VC(ベンチャーキャピタル)や投資ファンドなど投資を事業にしている会社は多くの場合、IPO後の任意の時期に利益を最大化できると判断したタイミングで持株を売却することを前提にしています。
発行済株式の相当数が市場に放出されれば株価に甚大な影響を与えることはもちろん、どのような法人や個人が大株主になるか想定ができなくなるため、経営に重大な影響を与えることは避けられません。
資本・業務提携は非常に有効で魅力的な手段ではありますが、やり直しが不可能な政策でもあり、将来まで見通して慎重に考える必要がある施策と言えます。

売り手側のメリットとデメリット

資本・業務提携を行うにあたり、株式を譲渡し資本の受け入れを行う側から考えたメリットは多くあり、そしてその形にはいろいろな段階が想定されます。
大口の取引先と資本を持ち合うことで信頼関係を高める象徴的なものから、有名企業に株主として名前を連ねてもらうことによる与信の補完といった少数株主の段階。
資金不足に陥り、取引先や既存の提携先から資本の提供を受け事業の立て直しを図る局面で株主になってもらう段階。
自力では経営の再建や事業の継続が困難になった場合に、取引先や業界の大手企業から多額の出資を受け入れその傘下に入るもしくは大株主になってもらう段階。
いずれの場合も、資本を受け入れ業務提携を行うことで財務内容が改善し、売上の増大やコストの削減を図ることができます。
資本金の積み増しはそれだけで企業の与信を補完することにもなりますので、取引先の拡大や取引条件の見直しにも寄与する可能性が高いといえるでしょう。
また、救済的な資本提携の場合、出資元企業から最優遇の条件で仕入れや商品の提供を受けられることもあり、それが大株主としての出資元の利益にも繋がることから、利害を強固に共にするかけがえのない取引先となることも、非常に大きなメリットと言えます。

デメリットとしてあげられることは、増資後の持株比率によっては経営の独立性を失うことになりますので、経営者の持株比率100%の体制とはだいぶ勝手が違うということになるでしょう。
また外部株主が存在するため、これまで机上で済ませていた、場合によっては書面ですら行っていなかった株主総会を必ず招集し、開催する必要も生じてきます。取締役会を設置している会社であれば毎月1回役員会を開催し、議事録を残すなどの対応も必要になるでしょう。
これまでは法律で定められている事柄への対応が緩くても、そのことで損害を受ける可能性がある株主が経営者だけであったため問題になりませんでしたが、外部から出資を受け入れると経営者は文字通り株主から経営を委託された存在となります。
法律で定められた義務を着実にこなす必要があり、そのことはデメリットとも言えますが、一方でコーポレート・ガバナンスを強化するという観点ではこの自由度の制限をメリットに変え、経営改革として活かすという考え方もできるとも言えます。

買い手側のメリットとデメリット

資本・業務提携の際の買い手側は資本の出し手であり株式の譲渡を受ける側になりますが、そのメリットの追求にもやはりいろいろな段階があります。 取引先などに少数株主として出資し、関係強化の象徴とする段階。 大口の取引先などにある程度の金額で出資し、株主の立場で利害を共にすることを形にする段階。 自社の商圏を拡大する目的や、周辺事業との連携を強化し他社を支配下に置くことを考える大株主の段階。 いずれの場合も、出資額に見合ったリターンが期待できるのか、という観点から投資を考える必要があるでしょう。 この際資金の出し手側にとってのメリットは、100%子会社などのように完全に経営にコミットし管理する段階から、資本関係があることを前提に仕入れやサービスを有利な条件で提供を受けること、あるいは自社製品やサービスの優先的な採用の要請をする段階まで、目的に応じて様々な使い分けができることです。 これらの段階は徐々に関与度を高めていくことで最終的に100%子会社にするための手段としても取り組むことは可能であり、また関与を止めることも任意に行えることに魅力があります。 どの段階まで資本を持ち、あるいは止めるのかを任意に決められることが大きなメリットと言えるでしょう。 一方で、出資額が経営に関与できるほどの持株比率ではない場合、少数株主が経営者に対し、強制力を持って実施させられることは多くありません。 信頼関係が破綻すれば出資した持ち分は「捨て金」になることも十分にあり得ることは最大のデメリットと言えます。 資本業務提携の相手先は十分信頼でき、信頼が継続できることを確信している経営者とのみ、行うことが必須と言えるでしょう。

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