M&Aの活用方法

事業の選択と集中

引退や事業承継、事業を買収する手段としてのM&Aばかりが注目されがちですが、M&Aは事業の選択と集中という観点からも大変有効な手段です。

新しい事業に着手した場合、あるいは周辺事業に進出した時、必ずしもその挑戦が上手くいくとは限りません。場合によっては損切りし、撤退する勇気を持つことが必要になる事があります。
このような場合も、投資した設備や場合によっては土地建物、教育し育てた人材へのコストを考えると、その全てを除却あるいは投資倒れにすることはできれば最後の手段にしたいものです。
廃業を考えるのは最後の手段であるように、勇気ある撤退をしながらも可能な限り最大限の回収を図り、体力を維持し本業に集中投資する事を考えるには、M&Aは大変有効な手段であるといえます。

事業からの撤退をいつ考えるのか

経営は時に我慢の連続です。経営者であれば誰しも、時には損切りをしてでも事業から撤退をするべき時があることは教えられるまでもありません。
しかし、先見の明を持ち新しい事業に進出した経営者は、時に非常に我慢強い存在でもあります。それは、新しい事業は一朝一夕に成らない事をよく知っているからであり、一度着手した以上、簡単には投げ出さない強い信念を持っているからではないでしょうか。

一方で、心理学の世界には「コンコルド効果」という言葉があります。
コンコルドは、1969年に英仏が共同開発したあの有名な超音速旅客機のことですが、コンコルドはその開発が進むにつれ、商業ベースでの成功は難しいことが徐々に明らかになっていきました。
しかしながら時代は冷戦のまっただ中です。超音速旅客機の開発に失敗することは国威を損なうことと考えた英仏は、もはや商業ベースでの成功よりも超音速旅客機を完成させることそのものにこだわり続け、開発を続けることになります。
そして完成したコンコルドは、採算ラインが250機と計算されたにも関わらずわずか16機が生産されただけで、エアラインからも乗客からもほとんど支持されること無く世界の空から姿を消しました。
ここから転じて、もはや投資がコストと時間の無駄とわかっているのにやめることが出来ない心理状態を指して「コンコルド効果」と呼ばれるようになりました。
経営者のように、コストと時間に厳しい観念を持っていれば信じ難い話ですが、自分だけは大丈夫と考えるべきでは無いのかもしれません。
事業に踏み留まっている理由は何なのか。希望的観測をふと脇においた時、もし、留まる理由が後は意地だけだと気がついたら、それはもう撤退するべき時だと言えるでしょう。
ちなみにコンコルド効果が見られるのは人間に限られ、しかも子供はこのような行動を取らず、成人だけに見られる現象だそうです。
子供の判断力からも、学ぶべきことはありそうです。

事業再編の手段としてのM&A

事業の撤退というタフな決断は、決断をすることができても撤退を成功させ傷を浅くすることは容易なことではありません。
織田信長が浅井・朝倉連合軍に敗れた際、羽柴秀吉が殿(しんがり)を引き受け一躍戦国の表舞台に踊り出たように、撤退戦を成功させる事は攻めることよりも何倍も難しいことと言えます。

2016年現在、このような状況で果敢に戦っている事例として挙げられるのは、先述のシダックスの撤退戦と言えるでしょう。
シダックスはおいしい食事をしながらカラオケを楽しむ「レストランカラオケ」という概念でカラオケ業界をリードし続けてきましたが、カラオケがそのような形で楽しむ娯楽では無くなってしまった昨今、マーケットが伸びている状況にも関わらずひとり負けの様相を呈してきました。
ここに至り、シダックスは極めて勇気ある撤退戦を開始し始めました。
カラオケ事業に一切執着を見せず、本社にカラオケ事業を営む主要な同業他社を集め、全国に点在する主なカラオケボックスの売却を申し入れます。

さらに、本社とカラオケの旗艦店を展開していた渋谷の一等地にあるシダックスビレッジから本社機能もカラオケも全て撤退させ、賃貸物件として貸し出すべく改装に着手しました。
シダックスは元々産業給食から成長した企業ですが、このようにして撤退戦から捻出した費用は改めて本業に回帰し産業給食から、さらには病院や介護施設の給食事業を強化して本業の厚みを増すための資金に充当する方針のようです。
大きな企業の話のようですが、スモールM&Aでも話は全く変わりません。
本社の撤退すら厭わず恥も外聞も無く、周辺事業から撤退を決め本業を強化する方針を決めた際にはここまで素早く、そして徹底する姿勢。スモールM&Aで、支店や不採算店舗の閉鎖を決断し再編することと何も変わらない決断のプロセスと言えます。
なお、シダックス本社に集められたカラオケ同業他社は、シダックスの店舗網を一から揃えたら莫大な投資が必要になることから、その買収の持ちかけにほぼ全ての会社が前のめりになってデューデリジェンスを開始しているそうです。

強みを活かして成長を加速させる

不採算事業を切り離し本業に回帰する手段としてのM&Aの事例をご説明しましたが、やや挑戦的な取り組みですが、事業の選択と集中には、安定的に収益を上げている事業を売却し将来性のある事業を活かすことに集中投資するという手段もあり得ます。

大きな事例で言えば、肌着や繊維資材大手のグンゼ株式会社様の場合。
元々グンゼは社名を郡是製糸株式会社と言い、地元の農家に飼育を委託した蚕から取れる糸を販売する会社でした。
郡是とは、国是が国としての方針を示す言葉であるように、郡是(当時、グンゼ発祥の地の自治体区分は郡でした)に従い、郡の利益に資するべく地元貢献を目的として設立した会社であることから名づけられた名前です。
その後グンゼは製糸業として順調に成長しますが、やがて製糸業の周辺事業として繊維製品の製造を始め、製品の包装を内製化したことの延長で包装資材やプラスティック事業のノウハウを積んでいくのですが、1987年には本業である製糸業を完全に放棄することを決断しました。
将来性のある事業に経営資源を集中するため、敢えて本業を放棄した事例であると言えるでしょう。

スモールM&Aでもこのような事例は珍しくありません。
弊社が携わった取引(取引)でも、銀行や投資会社が期待し出資する、IPO(新規株式上場)が見込める事業に経営資源と資金を集中させるため本業を売却した会社があります。
薄利多売とは言え収益力は確実に見込める事業ではあるものの、業界の事情から先細りが確実な事業分野を持っていたある会社は、将来性のある事業に経営資源を集中投資するために安定的な事業の売却を決断しました。
結果として事業の売却は時勢を得ていたこともあり、事業部門が1年で稼ぐ経常利益の20倍で売却する事ができ、事業の選択と集中に成功します。

スモールM&Aの事業価値は、経営者がその価値を一番知らないと言っても過言ではないケースも多々あります。
廃業を考える前に、客観的な評価を知る目的だけでも、M&Aの仲介事業者に相談する価値はあると言えるでしょう。

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